FASHION MEDIA CHRONICLE #01/新しいキーワードは「結婚」! 自分らしさを大事にするアラサー女子バイブル CLASSY.鈴木恵子編集長
加速するデジタルシフト、多様化する価値観やライフスタイル。目まぐるしく変化する現代社会において、メディアの在り方も日々進化しています。変わり続けることと、変わらないこと。ファッション情報を届けるメディアの「今」と「これから」に迫ります。初回は2024年春に3名の新編集長が誕生した光文社をフィーチャー。まずは今年で創刊40周年を迎えた『CLASSY.』の新編集長、鈴木恵子さんにお話を伺いました。
心を掴む!企画作りの極意は読者の悩みに寄り添うこと
―まずは鈴木編集長のこれまでのご経歴を教えてください。
2005年に光文社に入社し、2007年に『VERY』に異動しました。そこから16年5ヵ月、『VERY』一筋でしたが、このたび初めて他の雑誌である『CLASSY.』に異動することになりました。
『VERY』では、ファッションを中心に様々な業務を担当しました。例えば、自転車ブランド「HYDEE.」とのコラボや、大手自動車メーカーとの車の製作など、多くの企業案件にも関わりました。最後の3年間は『VERY』のWEB室長として、WEBの知識を学びながらサイトグロースに貢献しました。その経験を活かし、『CLASSY.』では紙媒体とWEBの両方で新たな挑戦をしていきたいと思っています。
―そもそも雑誌作りにご興味を持たれたのはいつ頃からですか?
実は、学生時代はファッション誌をほとんど読んだことがなく、漫画や小説ばかり読んでいました。その後、就職活動の紆余曲折を経て光文社に入社。最初は書店に営業に行く部署で約2年間、販売促進の業務を担当していましたが、突然『VERY』に異動することになりました。最初は前向きではありませんでしたが、実際編集部に配属になると、読者のライフスタイルを追う仕事がとても楽しくなりました。
光文社の雑誌は読者調査をとても重視しています。街で「この人に読んでもらいたい」と思う人を見つければ、「お話を伺えますか?」と声をかけます。編集部員であれば新入社員でも、ベテランでも、常に読者にお話を伺うようにしていて、編集長も例外ではありません。今でも、週末にカフェで素敵なママを見かけたら体が動いてしまいます。読者が考えていることや悩みを見つけて、それをヒントに企画を作るのがとても楽しい作業です。
新生『CLASSY.』のキーワードは「結婚」!その背景にある現代女性の価値観
―鈴木編集長の元、新たなキーワードとして「結婚」を掲げたと伺いました。
光文社の雑誌は表紙の左上にあるキャッチコピーを大事にしています。現在の『CLASSY.』は、“オシャレも人生も「自分で選ぶ」”となっていますが、私はこのキャッチコピーに「結婚」を追加することで、より現代的で面白い方向性になると考えています。
過去の『CLASSY.』では「本命彼女になって玉の輿に乗る」という価値観がありましたが、現代の女性は、自分らしさを大事にしたい、自分で選びたい、という考え方が強くなっています。さらに現代の20代女性たちは昔に比べ多くの悩みを抱えており、特に結婚に関する悩みが多いことに気づきました。だからこそ結婚をテーマに掲げ、読者に寄り添い、彼女たちの悩みや希望を反映した雑誌を作りたいと考えています。
―「結婚」を打ち出す中で、何か新しい発見などはありましたか?
まず、今の女性たちの「出会い」の主流はマッチングアプリです。出会い方が変わったので、それに伴い「モテファッション」も変化しています。以前のようなモテといえばワンピース、というようなルール化されたファッションではなく、自分らしさを表現できるスタイルが求められています。これを反映して、7月号の巻頭特集では「出会う日は黒トップスでいい」というテーマを取り上げました。
あと興味深かったのが、最近では自分の理想のプロポーズを「プロデュース」している女性が多いということ。例えば、「どのホテルでプロポーズされたい」「どの指輪が欲しい」「108本のバラはどの花屋」といった具体的なリクエストを日常的に彼にすり込んでいたり、プロポーズの企画書を作ったという方もいらっしゃいました。これも効率を重視した現代のプロポーズの形と言えるでしょう。8月号では、この「プロポーズマネジメント」について特集する予定です。
―結婚後のライフスタイルでも注目されていることはありますか?
はい、特にDINKS(共働き子なし)の夫婦に焦点を当てたいと思っています。というのも、一昔前は結婚したらすぐ子供を作る、という考えが大多数でしたが、最近では「早く結婚するのは仕事に集中したいから」、「子供を産むかどうかは後で考える」というキャリア系女性が増えています。結婚後、子供を持つまでの間が重要で、実はその時間こそ夫婦の時間を楽しむことができますし、お金もある。シェアファッションや一緒に始める趣味、共用できる高価な投資品など、夫婦で楽しめる企画の必要性を感じています。
キーワードに結婚を掲げていますが、もちろん結婚自体がゴールではなく、その前もその後も、おしゃれで素敵なライフスタイルを送りたい女性たちを応援していきたいと思います。
新しい結婚情報発信、紙とデジタルのハイブリッド戦略
―改めて雑誌とWEBの施策についてお話しいただけますか?
雑誌では紙媒体の特性を活かし、読者の悩みに寄り添った心に響く企画と魅力的な写真を掲載していきます。デジタルでは、データベース的な役割を強化し、より便利かつクイックな情報提供を目指します。ブライダルジュエリーやお呼ばれ服、おしゃれな人たちがどんな選択をしているかなど、結婚に関する情報をいつでも手軽に見られるようにしたいと考えています。そのためにもインスタでは新たに『CLASSY.』花嫁アカウントを作ることも検討していますし、将来的にはTikTokやYoutubeなど動画での展開も視野に入れています。
―最後に今後チャレンジしていきたい企画や抱負などお聞かせください。
もちろんファッションをメインで提案するファッション誌という大前提で、結婚を軸に、その周辺にある様々な企画を盛り込んでいく予定です。『CLASSY.』が作る、女性にうれしい使いやすいマッチングアプリの開発もできたらいいなと考えています。
とにかく変わらないのは、読者のリアルな声と向き合い、悩みに寄り添い、半歩先の新しいおしゃれやトレンドを紹介していくことが私たちの使命だと思っています。
CLASSY.編集長 鈴木恵子さん 2005年光文社入社。営業職を経て2007年より雑誌『VERY』編集部に配属となり16年5カ月間在籍。2024年3月より現職。癒しの時間は仕事と子育ての合間を縫っての、ひとり焼肉。
Photo: Shoichi Muramoto
Text: Teppei Ikeda
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