FASHION MEDIA CHRONICLE #02/創刊30周年に向け邁進中 多様化する読者に寄り添う「ママ友」的存在に VERY 羽城麻子編集長
加速するデジタルシフト、多様化する価値観やライフスタイル。目まぐるしく変化する現代社会において、メディアの在り方も日々進化しています。変わり続けることと、変わらないこと。ファッション情報を届けるメディアの「今」と「これから」に迫ります。2024年春に3名の新編集長が誕生した光文社から、来年で創刊30周年を迎える『VERY』の新編集長、羽城麻子さんにお話を伺いました。
新編集長が切り拓く『VERY』の新時代
―まずは羽城編集長のこれまでのご経歴を教えてください。
2003年に光文社に入社して、男性ファッション誌『Gainer』に配属されました。そのままかれこれ14年、同じ編集部で経験を積みました。その途中で産休に入り、復帰したタイミングで『Gainer』が休刊になり、『CLASSY.』で1年間、さらに『JJ』で3年間、編集部のデスクをやり、2019年から『VERY』に。男性誌、女性誌、年齢も様々な媒体でたくさんの経験を重ねてきました。こうした経験が私の強みのひとつなのかもしれないと感じています。この度、編集長に就任することができ、大変光栄に感じています。
―編集長になられて数ヶ月経ちましたが、いかがですか?
私は『VERY』の副編集長からそのまま編集長になったので、編集部の雰囲気や部員のキャラクターも理解していて、その点ではスムーズでした。優秀なスタッフに囲まれ、とても恵まれていると思います。
現局長の今尾(朝子)はとても大きな存在だったので、初めて聞いた時は「え?私で大丈夫ですか?」というのが率直な感想でした。もちろん不安もありましたが、あまりに大きな背中だったからこそ「自分に同じことはできない」と、良い意味で割り切ることもできました。ただ、いざ編集長になってみると「こういうことに気を配っていたのか」とか、「あの時の行動にはこういう意味があったのか」など気付かされることも多く、前任者の偉大さを再認識しています。
―基本的な編集方針は変わらないのでしょうか?
はい、基本的な編集方針は変わらず、『VERY』はあらゆるママたちに寄り添う存在でありたいと思っていますが、その中でも特に新しいママ層を取り入れることを意識しています。最近の富裕層の子育て世帯では、あらためてコンサバティブなスタイルや、きれいめファッションへの関心が高まっていると感じています。カジュアルの路線も保ちつつ、すべてを一変させるわけではないですが、こうしたトレンドにも注目しながら誌面作りを進めていきたいと考えています。
あとは私がもともと『VERY』で読み物を多く担当していたので、その部分も大切にしていきたいですね。教育、ジェンダー、お金、インタビューなど、より一層、魅力的な読み物を読者に届けていきたいです。
多様化するママたちを象徴する新しいメッセージ
―現在の『VERY』のキャッチコピーは「私たちに、新しい時間割り」ですね。
このコピーは、コロナ禍でのママたちの生活の変化を反映しています。リモートワークの普及により、働き方や家族との時間の過ごし方が見直され、家事や育児の分担が進みました。それに伴い「自分たちの家族の新しい時間割りを作ろう」というメッセージが込められていましたが、30周年を迎える来年度には新しいコピーに変更する予定です。
現代のママたちはとても忙しく、仕事をしながら家事や育児を夫婦でうまく分担することが求められています。特に新世代ママたちのお話を伺う中で、新世代ママたちは友人と食事をしているときもあまり夫の悪口を言わない人が増えている、という話を耳にしました。少し前であれば、ランチなどで夫のグチをこぼすのが私を含めて当たり前でしたが(笑)。それは新世代ママが夫を家事育児をシェアする大切なパートナーとして協力し合う関係性を築いているからかもしれません。そのような新しい価値観やパートナーシップのあり方をとらえた、新しいテーマやコンセプトワードを日々考えています。
―ママたちのライフスタイルの変化の中でスタイルや生き方の変化についてどう思いますか?
おかげさまで『VERY』のインスタグラムでは34万以上のフォロワーを持ち、VERY WEBやSNS、本誌のトータルオーディエンス数は約437万人。多くのママたちとつながっています。インフルエンサーママたちの影響力も大きい一方で、『VERY』が特に注目しているのは、鍵アカウント(非公開アカウント)のママたちです。
多くのママたちは子どものことを公に発信することに抵抗があり、鍵アカウントを使って仲の良い友人たちとだけシェアしています。そして友人とのランチ会や飲み会で得た情報をLINEなどで共有し、そのまま服やコスメ、疲労回復アイテムなどを購入したりしています。自分のおしゃれを大々的に発信するわけではないですが、おしゃれを愛し、日常を賢く生き抜いています。そんな読者のインサイトを探り、彼女たちのマインドに寄り添う情報を提案することで雑誌としての価値を見出し、『VERY』=「ママ友」のような存在でありたいと考えています。
VERY創刊30周年に向けて、進化するVERYの未来
―改めて雑誌とWEBの施策についてお話しいただけますか?
読者層は雑誌とWEBで若干異なります。雑誌の読者は熱心なコアファンが多く、隅々まで読み込んでくれます。一方、インスタグラムやWEBの読者は分かりやすさや速報性を求め、特定のキーワードを検索して情報を得ようとします。各メディアの特性に合わせた企画を考え、それぞれでしっかりネットワークを深めていきたいと思っています。
また『VERY』独自の施策として「VERY児童館」というオンラインコミュニティがあります。これはコロナ禍で人と会えない状況だった0歳〜1歳の子を持つママたちを対象に、ZOOMでウェビナーを行い、乳幼児ママが知りたい情報をゲストとともに学び、他のママたちとつながれる場として作りました。現在でも継続中で、読者との重要な接点のひとつとして成長しました。そのほかにも今年はYou Tubeコンテンツも増やしていく予定です。より多様なコミュニケーション手段で読者とつながっていきたいです。
―最後に今後チャレンジしていきたい企画や抱負などお聞かせください。
来年の『VERY』30周年記念号に向け、現在、編集部員と共に楽しい企画を模索しながら準備をしています。現在、武井咲さんと東原亜希さんを表紙のレギュラーモデルとして起用していますが、新たな風を吹き込む新しいモデルの発掘にも力を入れています。新世代ママたちが共感するモデルや俳優を定期的に起用し、新しい価値観を紹介することで、読者の方たちの濃密な生活をより豊かにすることが、今年の大きな目標のひとつです。
VERY編集長 羽城麻子さん 2003年光文社入社。雑誌『Gainer』、『CLASSY.』、『JJ』を経て、2019年より『VERY』編集部に在籍。2022年11月から副編集長となり、2024年3月より現職。週7日の飲酒を週6日に減らすのが今年の目標。隙間時間は韓国ドラマとラジオ。日々、9歳の息子の子育てと仕事との両立に奮闘中。
Photo: Shoichi Muramoto
Text: Teppei Ikeda
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