FASHION MEDIA CHRONICLE #15 定期購読者から、次へつなぐZ世代まで。広く、深いラグジュアリー層とのエンゲージメントを 『25ans』編集長 外岡佐知子さん
価値観が細分化し、正解のない時代。メディアに求められているのは、情報の速さや量だけでなく、「どんな視点で世界を切り取るのか」という意思なのかもしれません。変わり続ける環境のなかで、何を更新し、何を守るのか。FASHION MEDIA CHRONICLEでは、ファッションメディアを率いる編集長たちの言葉を通して、時代と向き合い続けるメディアの「現在地」を探ります。今回は、この春にプリントとデジタルの編集部を統合し新体制へと移行したラグジュアリーファッション誌『25ans(ヴァンサンカン)』を率いる新編集長 外岡佐知子さんにお話を伺いました。
仕事を楽しむ気持ちとチャレンジ精神が根付いた社風
―外岡編集長のこれまでの経歴を教えてください。
大学時代から学生ライターとしてファッション誌に携わってきました。その後、卒業を機にフリーランスとなり、ライター・エディターとして複数のメディアを経験し、2007年に『ELLEgirl』の編集部員としてハースト婦人画報社(現ハースト・デジタル・ジャパン)に入社しました。その後、『ELLE Digital』『ELLE Japon』にも関わり、2019年に『25ans』への異動。コンテンツ・マネージャーとして配属され、半年後に『25ans Digital』の編集長に。そして今年3月に、「One 25ans」を掲げ、プリントとデジタルの編集部が統合し、編集長を務めています。

―フリーランスからの経験を経たからこそ感じられた、ハースト・デジタル・ジャパンの特徴はありますか?
入社当初は、とにかく楽しそうに仕事をする先輩方ばかりだったのが印象的でした。それは今も変わっておらず、「楽しむ気持ちを忘れない」というマインドが社内に根付いており、妥協せずにクリエイティブを追求しながらも、新しいことにもチャレンジする風土が当社の特徴だと思います。ゼロからイチを作るのは大変な作業ですが、チームワークとクリエイティビティでそれを乗り越えていく。その過程がエキサイティングで、何年いても飽きないですね。また、当社はデジタル関連のプロジェクトに積極的なので、プリントだけで終わらないマルチプラットフォームで発信できるところが強みだと思います。
―改めて『25ans』のターゲット層を教えてください。
『25ans』は、昨年創刊45周年を迎えて、社内の女性誌では『婦人画報』に次ぐ歴史ある媒体になりました。コアな読者層は30代後半〜40代が全体の5割弱で、次に20代、50〜60代が続く構成になっておりますが、年齢というよりもとにかく幅広い層のエレガントな女性たちから支持を得ています。これまでは彼女たちを「エレ女」と呼んでいましたが、今は時代にフィットする形で「エレ派」としています。

世代を超えて愛されるのは、積み上げてきた歴史があるからこそ
―幅広い読者層に向けて情報を発信するにあたり、心がけていることはありますか?
プリントとデジタルで発信内容をセグメントするのは当たり前ですが、20代のエントリー層となる“憧れハイエンド層”と、すでに『25ans』を体現している“熱狂ハイエンド層”に向けたコンテンツは意識的に分けるようにしています。同じ「エレ派」でも、年齢層によって求めているものが違うこともありますので。また、プラットフォームを分けてみる試みも行っており、最近だと20代後半〜30代前半向けにYouTubeシリーズを立ち上げました。その過程で気づいたのは、『25ans』=クラシックなイメージ、と思っているのは作り手側の固定観念であり、ラグジュアリー層も日常的にSNSを使っていますし、eコマースも利用しています。しなやかに変化するライフスタイルに、私たちもしっかりフィットできるように柔軟なマインドを保ち続けたいと思っています。

―外岡さんが読者の方と接していて、『25ans』ならではだと感じられるのはどんなところですか?
2世代、3世代で読んでくださっている方が多いのは、積み上げてきた実績があってこそだと思っています。雑誌の販売が厳しいと言われるこの時代に、定期購読者とのエンゲージメントも高いことが『25ans』の特徴であり強みです。先日開催した読者イベントでも50代のお客様が、「13歳の娘も『25ans』を愛読しています」とお話してくださいました。幼い頃から『25ans』がお家にあり、ジュエリーや宝飾品と同じようにブランドのひとつとして受け継がれている。祖母から母、母から娘へと継承されるマインドやエレガンスの中に、私たちも存在できていることは大きな自信になっています。また、今の母親世代はマインドも若く、娘からの情報も柔軟に取り入れている印象です。実際に「母娘企画」はスターコンテンツで、2026年4月号の君島十和子さん母娘の京都旅特集は、読者人気投票1位を獲得しました。「誌面を参考に、娘と行きます!」といったコメントも多く寄せられました。母娘の関係性は非常に注目で、今後は次世代を担うZ世代とのタッチポイントもさらに強化します。“継承マガジン”としての媒体のプレゼンスも上げていきたいと思います。

―プリントとデジタルを統合した「One 25ans」の新体制で、挑戦していることはありますか?
これまでは、プリントはプリント、デジタルはデジタルとそれぞれ独自コンテンツで完結しがちでしたが、今後はどうスピンオフして立体的に見せるか、という視点を大事にしていきます。企画の立案段階から議論を重ねることはもちろん、プリントとデジタルの双方から担当者をアサイン。SNSチームとも緊密に連携を図り、一つのコンテンツが持つポテンシャルを総力戦で最大化させる、立体的なブースト施策を追求しています。日々の生活の中で『25ans』と名のつくものに触れていただく時間を最大化して、エンゲージメントを高めていきたいと思っています。
メディアを超えた一歩先のバリューを提案したい
―クライアントとの取り組みも多いと思います。どんな反響が目立ちますか?
やはりファッションの第一特集は、エレ派の実用書として圧倒的な人気を誇ります。同様に、ジュエリー企画もニーズが高い。“社交の場”で身につけるにあたり、人と被らないユニークピースを探しているエレ派は非常に多く、高級ジュエリーブランドさんからも、「希少性の高いジュエリーも『25ans』であれば掲載する」とおっしゃっていただくことも。雑誌誌面が百貨店外商のダイレクトセールスにも繋がっている、という声もいただきます。また、とあるブランドさんからは「私たちが重視しているのは“信頼=トラスト”です。信頼できる読者・ユーザー・オーディエンスを抱えているメディアさんとご一緒したい。だから『25ans』を選んでいる」と言っていただけたのはとても光栄でした。それはまさに45年間しっかり育み続けてきた読者とのリレーションシップの賜物だと思っています。

―広告会社に期待することはありますか?
近年注目されている、いわゆる“富裕層マーケティング”というものを私たちは長年独自に実践し続けてきた自負があります。広告会社様が保有するビッグデータとはまた異なる視点として、私たちはファッションへの熱量、そして購買意欲と購買力を備えた、極めてエレガントな方々のコミュニティと深く繋がっています。例えば『25ans』の公式Instagramのフォロワー層を分析すると、最もシェアが高いエリアは、東京都ではなく大阪府大阪市です。昨年45周年を記念して東西で開催したクルーズイベントでも、関東を凌ぐほどの関西エリアの熱狂を目の当たりにしました。「ビッグデータよりベストデータ」。私たちはこの合言葉のもと、読者との深い信頼関係を基盤にしたダイレクトセールスなども今後さらに加速させていきたいと考えています。ぜひ一緒に、新たな価値を共創できれば嬉しいです。

―昨今の富裕層特有のニーズや傾向は何かありますか?
『25ans』はいつの時代も、「品格」「エレガンス」というものを、その時の気分や視点で切り取り、編集し、アウトプットしてきました。その歴史の中で、個人的に今はわりと本質的な豊かさというか、心の中のエレガンス、のようなものに回帰している印象があります。以前はエレガンスであることへの強い固定イメージがあったかもしれませんが、今はもう少し型にハマらず、自由にエレガンスを体現している方が増えていると感じます。
―最後に、外岡さんの今後の抱負を教えてください。
プリント、デジタル、SNSのプラットフォームをひとつの世界観として表現しながら、読者とのエンゲージメントを最大限に盛り上げていくこと。そしてまた、メディアを超えた一歩先の価値を提案したいと思っています。『25ans』はある意味ユニークな媒体でもあるので、その独創性を軸に、読者やオーディエンスに対して、人生を彩るようなサービスや体験を提案したいと思っています。そして、クライアントに対しては、共に課題解決を実現するソリューションパートナーであり続けたいと願っています。
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外岡佐知子さん 大学在学中から、ライターとしてキャリアをスタート。主にティーン向けメディアに携わった後、2007年ハースト婦人画報社(現ハースト・デジタル・ジャパン)に入社。『ELLEgirl』『ELLE Digital』『ELLE Japon』にてプリントとデジタルの両軸で、ファッション・ビューティー・カルチャーに関するコンテンツ制作を歴任。2020年に『25ans Digital』編集部へ異動し、2021年に『25ans Digital』編集長に就任。同年9月より『25ans Wedding Digital』編集長を兼任。現在は、2026年3月にプリントとデジタルの編集部を統合した『25ans』の編集長を務める。和のうつわ集めと歴史学的視点での展覧会巡りが趣味。最近は、アコースティックギターの手習いもスタート。
Photo:Mizuho Takamura
Text:Yuka Sakamoto
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