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FASHION MEDIA CHRONICLE #03/気高く進化する女性たちを彩る 日常のラグジュアリー VERY NaVY 澤辺麻衣子編集長

加速するデジタルシフト、多様化する価値観やライフスタイル。目まぐるしく変化する現代社会において、メディアの在り方も日々進化しています。変わり続けることと、変わらないこと。ファッション情報を届けるメディアの「今」と「これから」に迫ります。2024年春に3名の新編集長が誕生した光文社から、『VERY』の別冊付録としてスタートした雑誌『VERY NaVY』の新編集長、澤辺麻衣子さんにお話を伺いました。

ファッション大好き女子が行き着いた編集者というキャリア

―澤辺編集長のこれまでの経歴をお聞かせください

もともと編集者になりたいと思っていたわけではなく、学生時代からとにかくファッションが大好きで、ファッションに関わる仕事がしたいと考えていました。その中で、編集者というお仕事があることを知り、まずは雑誌のフリーランスエディターとしてキャリアをスタートしました。その後、いくつかの雑誌に携わり、創刊から休刊まで見てきた雑誌もあれば、いわゆる編集プロダクションのような仕事もやってきました。その一環で『VERY』のライターとしても活動していたご縁で、2011年に『VERY』編集部に中途採用として入社しました。

その後、2020年に『VERY』の別冊付録として『VERY NaVY』がスタート。その時から関わり、2022年に単独刊行となってからは編集室長、今年の3月からは編集長の肩書きで、編集部のまとめ役を務めています。

―雑誌作りを軸としたキャリアを続けてこられた理由、その魅力とは何でしょうか?

やはり読者からの反響でしょうか。情報や素材を集めて編み上げるプロセスが編集の仕事の面白さだと感じています。それはファッションもジュエリーも美容も同じで、いろいろな情報を集めてきては、読者に伝わりやすくするためにどうすればいいか考える。そして実際誌面にして読者が喜んでくれた時の嬉しさを味わってからは、編集者という仕事にのめり込んでいきました。

あと私は個人的に買い物が大好きで物欲も強いので(笑)、とにかく自分の興味のあることや、こう撮りたい!という思いを具体的に誌面に取り入れています。

『VERY』の一歩その先へ!『VERY NaVY』読者のライフスタイルとは?

―『VERY NaVY』のコンセプトについて教えてください。

コンセプトは「デイリーラグジュアリー」です。毎日使えるラグジュアリーアイテムを提案し、日常生活の中で育てながら付き合っていけるものを紹介しています。最近では時計やジュエリーの特集が人気で、価格高騰の影響もありますが、読者は慎重に自分のスタイルに合ったアイテムを選ぶ傾向が強くなった気がします。

例えば高級ブランドの同じブレスレットを3本持っていらっしゃる読者さんがいて、20代の頃から集め始め、その後、歳を重ねるにつれて大人っぽいものを買い足したり、ダイヤ付きを買ったりと、それぞれの育み方を楽しまれています。読者調査で得たそういうリアルな情報を素早く誌面の企画に反映させることが、雑誌作りにおいては重要です。

―澤辺さんは『VERY』と『VERY NaVY』の両誌を経験していますが、誌面作りにおいて心がけていることはありますか?

『VERY NaVY』の創刊当初は『VERY』と明確に差別化を図ろうとしていましたが、実は読者はそこまできっぱりした線引きを求めているわけではないことに気づきました。今では適度なバランスを保ちながら、無理に意識しないようにしています。

とにかく『VERY NaVY』流「デイリーラグジュアリー」は、「モダンでエッジの効いたスタイル」を目指しています。主力モデルである滝沢眞規子さんを中心に、自然体でありながら現代にマッチする洗練されたスタイルを提案しています。また、『VERY』と異なる点として、バッグやシューズのみならずウエアもブランドで選ぶのが『VERY NaVY』読者。お洋服までブランドのトータルコーディネートでご紹介するページも多いですが、その際はランウェイルックでも読者の好みにささるものを選んだり、こちらで新たにコーディネートを作るなど、なるべくリアルなスタイリングを提案することに徹しています。そのブランドが持つ洗練された世界観を表現すべく、ヴィジュアルとして美しいレイアウトと素敵な写真にこだわっています。

―それぞれの読者の悩み、ライフスタイルに違いはありますか?

『VERY NaVY』と『VERY』では読者のターゲット層が若干異なります。『VERY』は主に子育て中の女性を対象としており、子育て中だからこそのファッションやTPO、ライフスタイルに焦点を当てています。一方、『VERY NaVY』は子育てが落ち着きつつある、小学生以上の子どもを持つ女性をターゲットにしています。中学受験に向き合う方も多く、子どもにまつわる悩みはもちろん尽きませんが、自分のおしゃれやライフスタイルを見つめる余裕も出てきた方々です。起業する女性や女性CEOを取り上げたコンテンツなど、子育ての先にあるステージを見据えた、よりパーソナルな内容も提供しています。

より深く読者と繋がるために

―改めて雑誌とWEBの施策についてお話しいただけますか?

『VERY NaVY』は本誌とSNS、特にインスタグラムに力を入れています。まだ編集部員が少ないこともあり、編集部員は本誌とSNS運用を兼任していて、私自身もインスタグラムの運営に関わっています。大変ではありますが、本誌とSNSのそれぞれの利点をうまく掛け合わせていきたいと思っています。

インスタグラムでは本誌の撮影風景や展示会、モデルが参加したファッションショーやイベントの様子などをタイムリーに発信。実は私自身が撮影しているものも多く、インスタグラムは瞬発力が大切だと思っているので、なるべくハッとしたらすぐ写真におさめるようにしています。そういうリアルな情報の方が、反響があるように思います。ちょっと日記のような感覚で(笑)愛着を持って取り組んでいます。

誌面では専門的な知識や深い情報を掲載し、じっくり読んでもらうことで、しっかりその価値を伝えていければと思っています。SNSでの情報発信は速さや鮮度が求められがちですが、誌面で発信する情報の深さや質に劣らないよう、ちゃんとこだわりたい。その方法を今も模索中です。そういう意味では特にイベントに力を入れていきたいです。

―イベントでは、どんなことをやってらっしゃるんですか?

『VERY NaVY』では単体のイベントというよりも普段お世話になっているブランドさんとご一緒することが多いです。昨年も複数の海外ブランドさんと一緒にイベントを開催しました。あるブランドさんとはオンラインとオフラインの2部制にして、オフラインでは実際に商品に触ってもらったり、トークイベントを楽しんでいただきました。オンラインでも参加者の途中退出・離脱が少なく、質の高い読者をしっかり掴めているのだと実感しました。その他にも海外ファッションブランドさんとやったオフラインのショッピングイベントでは、ブランドさん史上、過去最高の売り上げを記録できたと高い評価をいただきました。

―最後に今後チャレンジしていきたい企画や抱負などお聞かせください。

『VERY NaVY』ではハイクオリティの維持を最優先に、迅速かつ質の高い情報提供を行うことで、より深く読者と繋がっていきたいと考えています。編集部チームもまだ少数なので、細かく情報共有しながら、一体感を持って誌面作りに取り組んでいます。年末にはウィンターリゾート特集や新たな女優とのコラボ企画なども出来たらいいねと話しているところです。

あと私も編集長として、もともと人前で話すのは得意ではなかったのですが、今年からは積極的にイベントなどへも出演する予定です。私自身としても新たな試みにチャレンジすることで変化を生み出し、より良い成果を目指して頑張りたいと思っています。

VERY NaVY編集長 澤辺麻衣子さん フリーランスのエディターとしてキャリアを積み、2011年光文社入社。雑誌『VERY』編集部を経て、2022年に『VERY NaVY』の単独刊行に伴い、編集室長に就任。2024年より正式に編集部となり現職に。ファッション、時計、ジュエリーページなどをマルチに担当するプレイングマネージャー。

Photo: Shoichi Muramoto

Text: Teppei Ikeda