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つくる側の努力を可視化し、つかう側の選ぶ理由に変える、日本発のサステナブルファッション認証制度を創設 伊藤忠ファッションシステム株式会社 サステナビリティシニアフェロー/一般社団法人Re-Creation 専務理事 山下徹也さん

Fashion × Sustainabilityをテーマに、ファッション業界で活躍するトップランナーの方々とファッションの未来や可能性、これからのビジネスのヒントを探る連載企画。今回は、日本発信のサステナブルファッション認証制度を創設した一般社団法人Re-Creationの専務理事を務める、伊藤忠ファッションシステムの山下徹也さんにインタビュー。生産背景の透明性確保、環境負荷の低減、雇用倫理改善など、多岐にわたる課題の解決に向けた各企業の努力をどう“見える化”し、生活者に伝えようとしているのか。その挑戦に至った想いや今後の展望についてお聞きしました。

企業と生活者をつなぐ新たな仕組みづくり

―Re-Creationを立ち上げるまでにどのような経緯があったのでしょうか。

2013年のラナ・プラザ崩落事故を機にファッション産業が抱える構造的な課題が浮き彫りになり、2015年には気候変動問題に関する国際的な枠組みとなるパリ協定が締結されました。これらをきっかけに、エシカルファッションやサステナブルな取り組みが一気に広がり、業界のみならず生活者にも意識の変化が生まれることになります。私が伊藤忠ファッションシステムに入社した2017年は、長期的にサステナビリティの課題に向き合いはじめた時期。そこで、あらためて「これからの世界をどうしていくのか」といった課題感を把握するために、ファッション業界に関わる約400人にヒアリングを行いました。結果、挙がってきたのは「その商品がどういう背景で作られていて、何にこだわっているか、どこがサステナブルなのかが分からない」「企業側が独自で言っていることについて客観性という観点で信憑性に欠ける」「企業がブランディングのひとつとしてサステナブルを謳っている風潮を感じる」といった声でした。中には、 “グリーンウォッシュ”というキーワードが出てくることもありました。

―思いのほか、シビアな意見が挙がってきたのですね。

そうですね。こうした意見を目の当たりにして感じたのは、製造現場の健全性の向上や素材選びへのこだわりなど、個々の企業の努力が生活者にきちんと伝わっていないということ。そこで企業の取り組みを正確に伝えつつ、それがサステナブルなものであるかが誰でも判断できるような明確な指標となる認証を策定することで可視化してはどうかと考えたのです。構想を具現化するにあたり、この分野のグローバルリーダーでもあり、SDGsを通じて信頼関係を築いてきた慶應義塾大学蟹江教授との意気投合もターニングポイントでした。

―設立された団体が一般社団法人という点も特徴的です。

業界の垣根を超えてより多くの方々に参加していただけるように、あえて一般社団法人にしました。ロゴのモチーフになっているのは、未来に誕生するといわれる「アメイジア大陸」で、“Towards A Future World(もういちど心をひとつにする未来)” をコンセプトにしています。現在、大陸が点在している地球は、およそ2億 5000万年後には、ひとつの大陸としてつながる可能性があるそうなんです。そんな地球の動きよりも早く、世界中の人々の心がひとつとなり、国境や、帰属を超えて、包括的で持続可能な社会を実現させたい。そんな想いをデザインにも込めました。

アメイジア大陸をイメージしたロゴマーク(写真右上)。タペストリーにはコンセプトの言葉も。

ロングライフや適量化にも注視

―認証制度の策定にあたり、特に注力された点はどんなことでしょうか。

重視したことのひとつが、国際的に通用する認証にするという点です。そのため、これまで国際機関が策定してきた規格を把握し、科学的なエビデンスも参照しながら、内容を吟味していきました。ふたつ目が、認証の有効期限を設けないこと。既存の認証制度は有効期限が1年や2年という短期がほとんどで、企業側にしてみると、取得と運用に時間やコストがかかる一方で、売り上げにつながりにくいという問題がありました。そこで無期限にすることで取得にかかるコストも抑え、持続可能な仕組みにできるというわけです。そして3つ目が、企業やブランド単位ではなく1製品ごとに登録できる点です。認証もRe-Creationのロゴマーク・認証番号・QRコードが記載されたラベルを製品ごとに付与し、品質表示と同じようにいつでもその内容を確認できるようにしました。認証項目については、ロングライフや適量化といった、今すぐ手を打たなければならない、あるいは今すぐ手を打てるという点に対して基準を設けました。これに関しては、サステナビリティのコンサルテーションやコンソーシアムを設立してきたことから循環型社会を推進するためのルールや経済合理性、インセンティブの仕組みなどに対しての知見も経験もある私たちだからこそ、できることだと自負しています。いずれも、短期、中期、長期それぞれの視点を合わせもちながら、時代にあった認証であり続けたいと考えています。

―現在どのくらいの商品が認証を取得しているのでしょうか。

現時点(2026年5月11日)で56商品です。商品に一貫性はないのですが、今のところ定番として選ばれやすいTシャツやデニムが多いですね。最近では、スポーツブランドやメゾンブランドのアイテムも認証を得ていて、EZUMi(https://ezumi.jp/)は、無料でお直しを行うリペアプロジェクトが認証の対象になりました。新しいところでは、LANVIN(https://www.lanvin-collection.com/)が「責任ある動物福祉の取扱い」の「羊へのレスポンシビリティ」で認証を取得されています(商品は今秋発売予定)。EDWINで扱っているLee(https://lee-japan.jp/)では、定番の101のリブランディングに伴い、「雇用倫理」で認証を得たのですが、20代や50代など幅広い年代の顧客にも好評で売り上げが伸びたそう。目に見えて売れることで、経済価値と事業価値を感じられているといった声をいただきました。アーバンリサーチさんからは、認証を得るプロセスのなかで、サプライチェーンのセルフアセスメントになり、なおかつ人材の育成にもつながっていったという思わぬ効果についてのご報告もありました。サステナビリティへの取り組みが成果に結びついている企業が増えているのは嬉しいですね。

目指すのはグローバルスタンダード

―今年の1月、3月にはNEWoMan高輪でイベントも行われました。

1回目のテーマは、作り手の想いを伝える「ステークホルダー to コンシューマー」。認証を取得したTシャツの原料を提供している企業、再生コットンを製作している企業、商品を販売しているショップの三者へのインタビューを実施し、参加者にそれぞれの想いに触れていただきました。2回目のテーマは「顧客体験」。リペアコーナーやユーズドコーナーなどを設け、「実際にどう選べばいいのか」という疑問に応える場をつくりました。結果、“知る”だけではなく、選び、身に付け、次へつなげる、という流れを体験することで、ひとつのアイテムの価値に触れることがと満足されるお客さまが多く、手応えを感じました。

3月に開催された“Re-Creation PLAY PARK”の様子。“選ぶ”を楽しめる体験設計に。

―今後のビジョンについてはどうお考えでしょうか。

Re-Creationを、国や立場を超えて必要とされるグローバルスタンダードへと育てていくという構想があるなかで、大切にしていきたいのは、私たち日本人が受け継ぎ、守り続けてきた文化や思考です。ファッションのサプライチェーンの長さや複雑さは万国共通のものがあります。そうしたなかで、日本では、綿花の栽培、糸の紡ぎ方、縫製、販売の仕方、接客、そのすべての工程も渡し方もとても丁寧に行われています。それは、生地のC反率(※規格外品)の低さにも表れているように、世界的に評価が高い。そうした日本の仕事に対する精神性を反映させるような認証を行い、今年度は5500品番までを広げていく計画立てています。今の百倍ですから、一瞬驚かれるのですが、すでに認証を受けている企業からは社内で製造しているすべての商品で認証を得たいといった話しもいただいているだけに、決して不可能ではないと思っています。

―今後、広告会社であるザ・ゴールと一緒にできることとして、どんなことが考えられるでしょうか。

お互いにファッションという生活文化に未来の可能性を感じているという共通点があると思うんです。我々はファッションを介して企業と生活者の間を取り持つ仕組みづくりを進めていく。ぜひ広告のプロフェッショナルであるザ・ゴールさんには日本の精神性を持ったモノづくりのよさをより多くの方々に広めていっていただきたいです。JOURNALのこれまでのアーカイブを拝見すると、僕がよく見知っている方々も大勢、登場されています。日本のファッションをより楽しく、豊かにしていこうという気概にあふれている仲間とともに業界の未来を一緒に楽しんでいけたらと思います。

■HP:https://re-creation.or.jp/

■Instagram:https://www.instagram.com/re_creation.jp/

■YouTube:https://www.youtube.com/@Re-Creation_official

山下徹也さん 1974年生まれ。株式会社ワールドに入社。全社戦略部門・新業態開発部門責任者に就く。2017年より伊藤忠ファッションシステム株式会社にてマーケティング部門責任者を経て、シンクタンク組織ifs未来研究所所長代行に就任。2022年、官民連携イニシアティブであるジャパンサステナブルファッションアライアンスの設立をディレクション。2024年に一般社団法人Re-Creationを設立し、ファッション産業における環境・人権・透明性への取り組みを第三者評価で可視化する認証制度のプロジェクト「Re-Creation」をローンチ。同法人の専務理事を務める。

Photo:Kotera Rio

Text:Tomoko Hori